実践例
ドラマセラピーは、子どもから高齢者の方まで、様々な方に役に立つ心理療法です。現在、また、過去において、ドラマセラピー・インスティテュートのメンバーにより、行われているグループの例をいくつかご紹介します。
・養護施設での子供のためのグループ(小学生、中学生、高校生)
事情があって親と一緒に暮らせない子どもたちのためのグループセラピーです。多くの場合、子供たちは、虐待やネグレクトを体験しています。そんな彼らに、自尊心を育て、仲間との関係を作りながら、自信をつけ、自分への愛情を少しでも持てるように目指します。年齢に合わせてグループ内容を決めます。
・特別支援学校における発達障害児のためのグループ
知的障害や発達障害により、それぞれのニーズに合った形で教育を受ける子どもたちのためのグループセラピーです。それぞれのニーズが異なるため、主に自己表現力を伸ばし、自信を身につけること、また、グループの凝集性を高めることを目的としていました。音楽療法とのコラボレーションにより、子どもたちの感情に共感を示しつつ、その体験を言語化し、知的に理解していく作業を行っていきました。
・うつや神経症などの方のための治療グループ
主に、心理カウンセリングと平行しながら行う治療グループです。安心できる環境の中、仲間との関係を作りながら、自己受容、他者受容を体験していき、自信、自己愛を育てて行くことを目的とします。ドラマを通して、普段の自分ではない役割を演じることで、自分の幅が広がっていき、今まで心の中にたまっていた感情を思いきり出すことができるようになります。人間関係が苦手だった方も、安心できる人間関係を持つことが、どれほど癒しにつながるかを、体験的に理解できる素晴らしい場所となります。
・高齢者施設でのグループ
リクリエーションの一つとしてもご利用いただけますが、実は、ドラマセラピーはもっと深いものを提供しています。高齢者になると、うつや喪失感などに苦しむことがあります。ドラマの世界で、自分の英知を取り戻し、自分の可能性を確認できます。体の自由が利かなくなってきた方にも、ドラマで様々な役割や体験ができるため、自信にもつながります。また、そのときの自分の気持ちを大事にすることができ、常に、「今ここにいる自分」を感じることができます。年齢を重ねて来た自分を受け入れ、自分の素晴らしさを思い出すことができるワークにもなるのです。
・自己啓発、自己成長のためのドラマセラピーグループ
このワークでは、ドラマセラピーの基礎理論を教えながら、それを日常にどう生かせるのかを、体験的に学んで行きます。そして、想像力、自発性、創造性を育てて行くことで、確実に自分の幅が広がり、もっと自分のことを好きになって行くことができます。セッションを重ねるごとに、自分の課題が自然と出て来た時には、それと向き合うワークもします。
・異文化体験をした/している方向けのグループ
異文化体験をした、またはしている子ども・中学生・高校生向けのグループセラピーです。「異文化体験」にまつわる様々な困難や葛藤を持つ方が集まることで生まれる共通理解を通してグループの凝集性を高め、それぞれが持つ悩みやテーマをその都度取り上げて行きました。アイデンティティの葛藤の最中にいる子どもたちにとっては、このような安心できる場において、様々な形で自己表現を試みることで、自己理解や自信を高めていくことができました。